直葬(火葬式)の経験がない場合は、一般的な葬儀との違いがわからず、香典の扱いにも迷ってしまいますよね。
そもそも直葬とは、通夜・告別式をせずに火葬だけを執り行う葬送の形式を指します。密葬や火葬式と呼ばれることもあり、ご遺族の身体的、経済的な負担を軽減できることから近年支持を得ているスタイルです。
直葬に慣れていない場合は、ご遺族に失礼がないようマナーを気にするあまり、お悔やみの気持ちに集中できないこともあるかもしれません。
そこで本記事では、直葬の場合も安心して対応できるように、直葬においての香典マナーを紹介します。
- 直葬と一般的な葬儀の違い
- 関係性による香典の相場
- 香典の包み方や渡し方のマナー
- 死産の場合の対応
など、直葬で参列者やご遺族が疑問を抱きがちな点について詳しくお伝えします。
関連記事はこちら:直葬における葬儀のマナーや考え方の例
香典とは?
香典とは御霊前にお線香やお花の代わりに供えるもので、急な不幸での葬儀による出費に対して、葬儀費用の一部にあててもらうという助け合いの意味も込められています。香典袋に入れて、通夜・葬儀・告別式のときに持参します。
ただし、訃報の連絡がきたときにすぐに弔問する場合は香典の準備は必要ありません。服装も普段着で問題ありませんので、この際はお悔やみを述べることを大切にしてください。
通夜だけの出席の場合、また通夜・告別式の両方に出席する場合は通夜に出す方が多いです。
受付がいる場合には記帳を行なった後、ふくさから香典袋を取り出してお悔やみの言葉とともに差し出します。
受付がいない場合には拝礼の際に御霊前に供えるか、遺族に手渡しします。
香典の金額・相場について
故人とのつきあいの深さ、年齢、地域によって香典の持参金額・相場は異なります。
以下が一例となります。
祖父母・配偶者の祖父母 | 10,000〜50,000円 |
---|---|
父母・配偶者の父母 | 30,000〜100,000円 |
兄弟姉妹・配偶者の兄弟姉妹 | 30,000〜100,000円 |
おじ・おば | 10,000〜30,000円 |
その他の親戚 | 3,000〜30,000円 |
友人・知人 | 5,000〜10,000円 |
友人・知人の父母 | 3,000〜10,000円 |
会社の上司 | 5,000〜20,000円 |
会社の上司の家族 | 3,000〜10,000円 |
会社の同僚 | 5,000〜10,000円 |
会社の同僚の家族 | 3,000〜10,000円 |
恩師(先生・教師) | 3,000〜10,000円 |
近所の人 | 3,000〜10,000円 |
お世話になった人(仲人など) | 10,000円〜 |
20代、30代、40代以上といった年代や、会社関係であれば役職などによっても異なります。
直葬(火葬のみ)の場合の香典マナー
近年では通夜がなく、葬儀・告別式で済ませる家族葬も増えてきましたが、直葬の場合は両方ともない場合が多いです。
そのため、直葬の場合はご遺族から訃報とともに香典の辞退の旨が伝えられるかもしれません。その際はご遺族の意向に従い、香典は持参しなくて問題ありません。
辞退の旨があったにも関わらず渡してしまうと、香典返しがご遺族の負担になってしまう場合があります。元々香典は葬儀に伴う突然の出費を助け合う意味合いもあるため、費用負担が20万円以下と一般的な葬儀に比べて出費の少ない直葬では必要ないという考え方もあります。
直葬(火葬のみ)における香典の渡し方
ご遺族が香典を辞退していないのであれば、受付で香典を渡しましょう。受付が設置されていない場合は、喪主やご遺族に手渡します。いずれにしても、香典を手渡す際は「この度はお悔やみ申し上げます」「この度はご愁傷様でございます」といったお悔やみの言葉を添えるのがマナーです。
また、祭壇が設けられている場合は、焼香のタイミングで祭壇に供えることもあります。香典を渡したり供えたりする際は、ふくさから香典袋を出した状態で、両手で持って行います。
直葬(火葬のみ)に参列する場合に香典の準備は必要か
参列する立場の場合、香典の受け取りと辞退は喪主もしくは家族の代表者の判断に従います。気持ちとして香典を渡したい場合であっても、香典辞退の旨があった場合は持参を控えましょう。
辞退の旨が特段なかった場合には念のため準備を行なっておきますが、渡す際に断られた場合は引き下がりましょう。他の方から香典を辞退している場合にも関わらず、受け取ってしまうと参列者に不公平な扱いが生まれ、後々のトラブルとなることもあります。
香典を受け取った場合に香典返しは必要か
喪主もしくは家族の代表者の場合、直葬に参列した方から香典を渡されたときはありがたく受け取ることがマナーとなります。
そもそも葬儀の形式と香典は関係性がないため、一般的な葬儀同様にお返しをします。香典返しを準備していた場合は、香典をいただいたときにお返しを渡します。準備を行なっていなかった場合には、四十九日の忌明け後に渡しましょう。お返しは、香典の金額の3分の1から半分程度のタオル、コーヒー、お茶などが一般的となります。
ただし、辞退の伝え洩れをしてしまい、香典を渡された場合には、その旨を伝えて辞退した方が先ほどと同様、後々のトラブルになりにくいです。
香典に包む金額はどの程度にすればよいか
前述した「香典の金額・相場について」は一般的な葬儀での香典の金額となります。直葬は、葬儀にかかる費用を抑えているため、そもそも香典の金額はいくらくらいが妥当なのでしょうか。
葬儀会社により異なりますが、直葬は「20万円以下」の価格帯が多く、一般的な葬儀の10分の1程度なので、それに見合った金額で考えても良いかと思います。
一例として、
祖父母・配偶者の祖父母…10,000円程度
父母・配偶者の父母…30,000円程度
兄弟姉妹・配偶者の兄弟姉妹…10,000円程度
友人・知人…5,000円程度
のように「香典の金額・相場について」の項の下限を参考にしてもよいでしょう。
また、香典を受け取る側も、直葬のときはもらえる額は少ないとあらかじめ想定しておきましょう。
直葬(火葬のみ)における香典袋の表書きの書き方
直葬であっても、香典の表書きは一般的なマナーと同じです。表書きは宗派によって次のように異なります。
仏教(浄土真宗以外) | 御霊前 |
---|---|
浄土真宗 | 御仏前 |
神道 | 御霊前、御玉串料、御榊料、御神前料 |
キリスト教
(カトリック) |
御霊前、御花料、御ミサ料 |
キリスト教
(プロテスタント) |
御花料、献花料、忌慰料 |
無宗教・不明の場合 | 御香典 |
仏教徒であれば「御霊前」を用いるのが一般的ですが、浄土真宗の場合は宗教的な考え方に違いがあるため「御仏前」を用います。
キリスト教は宗派によって使える表書きが異なるので注意しましょう。また、キリスト教の場合は水引ではなく白無地封筒またはユリや十字架が描かれた専用の不祝儀袋を使うのもポイントです。
宗派がわからない場合や心配な場合は「御香典」にすれば間違いないでしょう。
表書きを書く際は、悲しみの涙で文字が薄まったことを意味する薄墨色を用いるのがマナーです。名前は水引の下にフルネームで記載します。連名の場合は代表者の名前を中央に書き、続いて左側に名前を書いていきます。
なお、4名以上の連名になる場合は、全員の名前ではなく「〇〇一同」といった表現にするのが一般的です。そのうえで、メンバーの氏名、住所、包んだ金額をリスト化して、別紙として同封します。
また、香典袋は表書きのある外袋とお金を入れる内袋にわかれているのが基本です。内袋の表面中央には包んだ金額を縦書きで記入し、裏面には左側に寄せて住所と名前を記載しましょう。
火葬式に間に合わなかった場合の香典の渡し方
火葬式に間に合わなかった場合は、以下の方法で香典を渡します。
・郵送する
・後日弔問した際に手渡す
郵送の場合は現金書留を利用します。その理由は、法律によって現金を普通郵便で送ることが禁止されているからです。現金書留を利用する際は、郵便局の窓口で手続きを行います。注意点として、香典を送る場合は現金書留封筒に直接お金を入れるのではなく、香典袋に包んだものを封入しましょう。短い文章でも手紙を添えることで、お悔やみの気持ちがよりご遺族に伝わりやすくなります。
また、弔問はご遺族を訪問してお悔やみの言葉を伝える行為です。弔問に伺うタイミングは、火葬式の3日後〜四十九日前が望ましいとされています。事前にご遺族に連絡し、ご遺族の都合に合わせて訪問しましょう。
服装は普段着で構いませんが、黒や紺などの地味な色にするのが無難です。
ご遺族の負担にならないよう玄関先で済ませるのがマナーですが、ご遺族にすすめられた場合は家に上がってお線香をあげた後、ご遺族に香典を手渡します。
死産で直葬(火葬のみ)が行われた際の香典
死産で火葬のみ行われた場合は、香典ではなくお見舞金を渡すのが一般的です。お見舞金の相場は、家族や親族であれば親密さや関係性に合わせて1〜3万円程度、友人や会社関係であれば5,000円程度とされています。
死産の場合、お見舞金の封筒は白無地、あるいは赤帯入りのお見舞い用の封筒を使い、表書きは「御見舞」とするのが一般的です。また、香典と同様に新札を包むのはマナー違反とされているため注意しましょう。
ただし、死産のようなデリケートなケースでは、こうしたマナーよりもご遺族の気持ちに寄り添うことが優先される場合があります。お見舞金を送るよりも、先方が落ち着くまでそっとしておいたり、手紙やメール、花を贈ったりする程度にとどめたほうが喜ばれることもあるでしょう。
直葬(火葬のみ)での香典はご遺族の意向に添いましょう
直葬の香典は参列者、喪主もしくは家族の代表者にとっても、初めての場合も多く、扱いに困ってしまいがちです。直葬は火葬のみを執り行う葬送スタイルで、通夜・葬儀・告別式を行わないことが多い点が一般的な葬儀とは異なります。
しかし、直葬の場合も香典の基本的な考え方は変わりません。ただ、包む金額は、一般的な葬儀に比べて葬儀費用が抑えられている分、相場の下限を目安にしてもいいでしょう。ご遺族が香典を辞退している場合は、ご遺族の意向に従い無理に渡してはいけません。
また、ご遺族側の注意点として、香典が不要なときには訃報を知らせた際に香典辞退の旨を必ず伝えるというように遺族側で事前に決めておくと、参列者も対応しやすくなります。香典を辞退しない場合には香典返しが必要であること、香典の金額が少ない可能性があることを理解しておきましょう。
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